(9号掲載)
ここ鹿屋に米空軍無人偵察機MQ9の一時展開が決まってから半年が過ぎた。このインタビューは配備が決まり各地で住民説明会が行われている最中に行われたものだ。今これを読むとどう思うだろうか。私たちはたった半年で何事もなかったかのようにMQ9を受け入れて(良くも悪くも)生活を続けている。すぐ目の前には当初の約束だった一年間の展開期限が迫っている。何事にも忘れっぽい現代に、半年後、さらにはその後にも読んでいただけたら嬉しい。
聞き手:土屋耕二

繁昌誠吾さん
株式会社「繁昌建設」代表取締役。
鹿屋市水泳連盟副会長、鹿屋市テニス協会理事、鹿屋市ボウリング協会会長、鹿屋市パラスポーツ協議会事務局長などを歴任。現在、鹿屋市議会議員。
鹿屋へのMQ9配備問題
土屋 本日はお忙しいところありがとうございます。
繫昌 よろしくお願いします。
土屋 まずお聞きしたいのはやはり、MQ9(米軍の偵察部隊)の配備の問題ですね。これまでの鹿屋市や防衛省の対応についてはどのようにみてますか?
繫昌 現在、防衛省は「市民の理解が得られるようにする」とずっと言っていますが、その理解が得られた・得られなかったという判断はだれがするのか?
住民説明会を行えば、理解が得られるというのは違いますよ」と、私は議会全員協議会で防衛省及び市長に対して発言しました。
土屋 私も説明会に参加してきました。市民にはさまざまな意見があり、ときには市民同士で対立するような、場面もあり、まだまだ説明は足りていないという印象でした。
そもそも、他の基地のように自衛隊で偵察部隊を運営できれば、それほど問題にはなってないはずです。あと、防衛省の方々が来ていましたが、本来なら米軍が説明すべきですよね。
繫昌 私が参加した説明会での質疑応答では「住民の理解が得られなくても展開するんですか」という市民からのまっすぐな質問に対して、防衛相は真摯に答えてないという印象でしたね。
私は個人的には、現在の北朝鮮や中国の脅威自体は十分理解しているつもりです。ですから、今回の鹿屋基地での米軍無人機MQ9の一時展開そのものについては、個人的に反対とか賛成と、述べる立場ではないと思っています。
ただ、今回、空中給油機KC130の訓練の時と違うのは、米軍関係者約200人が、鹿屋市に一年間滞在するということです。そして、将来的に米軍基地化の話が進んで「それを止めることができるのか?」という話になるのではないかというこということです。
西之表市の馬毛島基地がいい例だと思います。あそこは自衛隊の基地ですけどね。さっき土屋さんが言った「自衛隊の偵察機じゃ駄目なんですか」っていう質問に「自衛隊では足りない」と回答するんですが、それなら増やしたらいいのではと単純に思ったところです。
土屋 今日の新聞で、空中給油機訓練が鹿屋自衛隊では施設として不十分で、全然訓練ができていないというのが載っていました。
お金と基地と地域の問題
繫昌 これまで約30億円ぐらいの交付金をもらったんですけど、ほとんど訓練していません。それはある意味、市民の安心安全にとっては良いことであったのかもしれません。交付金はもらえたわけですから。空中給油機訓練のとき地元の方たちとも話もしました。地元の方から「受け入れんね。鹿屋市はお金がないんだから」って言うんですよ。それよりも、現状のヘリの騒音の問題をどうにかしてくれと言う住民が多かったですね。
ここ西原や上野町など、日中は窓を閉めないと話もできないことがありますからね。特に鹿屋基地はヘリの教育部隊ですから、なんかずっと飛んでいる。ご飯どきもうるさいので、お昼と夕方くらい休んでほしいという住民は多いですよ。
それに対して、市に対して「学校や住宅の防音対策に基地再編交付金は使えないのか」って私は議会でも質問したんですけど、市はできないって言うのです。
土屋 え? できないんですか?
繫昌 今度、野里の自衛隊用地に、テニスコートとサッカー場が整備される計画があります。これに関しても、当初はナイターをつけることができないと市側は答弁していましたが、私が熊本の防衛省に行ったときに「ナイター設備は設置できないんですか」って聞いたら、「いや、できますよ」と言うんです。行政派はこんな感じですね。鹿屋市でもこんな感じですから、信用できないところもあって、防衛省の方たちにも「理解が得られる、得られないの判断を明確にしてください」と話しています。
土屋 市議会のなかでの議論はどのような状況でしょうか。
繫昌 議会の中でも、一部の議員で基地化が進むことに反対の立場の人はいますが、正直、議会では議論になってないですね。
先日の市議会での説明会でも若手議員が「市民への説明会はなぜこの五ヶ所なんですか? 旧三町も含めて場所を増やすことはできませんか?」と、質問していました。このときの市役所側の説明は、「五ヶ所ですが、鹿屋市全体から来ることは拒んでいません」というような言い方をしてましたよね。
土屋 それは市役所が本来しないといけない、市民のことを思って丁寧に説明する、という態度ではないですね。
繫昌 説明会に参加して、私の印象ではMQ9そのものがそんなに危険なものではないということもわかってきました。防衛的に必要なのもわかった。
では何が心配なのかっていうと、高齢者の方たちは孫の心配。お父さんお母さんは子供たちのことなんです。住民説明会で連絡所を設置するっていうのは実は議員説明会ではなかったことなんです。防衛省側も短期間で検討して連絡所を作るということは、事態はすこしは進歩したということかもしれません。
土屋 さきほど繁昌さんのお話でもありましたが、行政はなんか下手ですね。鹿屋市の交付金の使い方とか、説明会の場所の問題とか。誰でもわかるようなことなんだと思うんですけど。なんなんですかね。やる気がないんですか?
繫昌 無責任だと思います。防衛省はたぶん市役所のせいにするし、市役所は防衛省に言われたからという。滑稽だったのはね、ある一人の市民の方が、「コロナがこんだけ広がってるのに米軍は感染がひどいじゃないか。その問題についてどう思っているのか」と防衛省じゃなくて、鹿屋市に答えてくれって発言があったんですが。
それに対して「私たちもまだこの話については、先週説明を受けたばかりで、まだ何もわかってません」と鹿屋市が答えたわけです。すると、その市民の方が「お前たちがわからないことを説明するな」って言ってね。
土屋 それはそうですね。この話は鹿屋市議の立場からは大きすぎる話だと思うのですが、この話は日米地位協定を含めた、二国間の関係の見直しからはじめないといけないと思ってます。もちろん、僕は中国がいいとは思ってませんが、先の大戦のことを考えると、アメリカは原爆投下や、東京大空襲のことなどもあり、あれは完全に民間人の虐殺です。繁昌さんはこのアメリカとの関係について何か思うところはありますか?
繫昌 私は長崎で働いていたこともあり、妻も長崎出身なので原爆についての認識は深いと思っています。当然、日米関係についても重要な問題だと思ってます。悔しいですけどね。ただそれを背負ってここまで日本が来て、平和を守ってきたのは事実です。ただ、反対・反対の立場の人に対しては「竹槍で戦うのですか?」と聞きたいですね。もう少し現実的な議論が必要なのではと思っています。
土屋 憲法の条文を素直に読めば、自衛隊の存在は違憲ですよね。そこも現実や実際に即して議論を進めていく必要がある。
繫昌 そうですね。
土屋 昨日から議会も始まり、30日まで議会が開かれますが、そこではどういった議論がされると思いますか?
繫昌 昨日、鹿屋市防衛議員連盟の会合があり、新しい役員などを決めて議論も少し行いました。
土屋 その議連はどういった集まりなのですか。入りたい人が入るんですか?
繫昌 入っていないのは三人だけで、ほぼ全員が入っていますね。
土屋 そこは、議論したり、勉強会をしたりという活動をするのでしょうか?
繫昌 うーん。怒られるかもしれないけど、基地の見学以外はただの集まりですね。
土屋 ん、どういうことですか?
議員同士で議論しない
繫昌 私が議員になって一番に驚いたことは、議員同士で議論をしないことです。例えば、この前の土屋さんのイベントで「リナシティ」のことを話しましたが、リナシティやおおすみ観光未来会議のことを議場で取り上げるのは私だけです。
土屋 なるほど。
繫昌 議会においても「どこどこに何を整備してほしい」という要望的な質問をする議員が多いのが現実です。 私は議論することが議員の本質であって、その過程で何かをして欲しいなら、何かをやめないといけないと思っています。
そういう困難な現実に正面から向かい合うのが議員の役割だと思いますね。だから、防衛議連も基地を見学してカレーを食ベるだけになっているというのが実情です。
ただ、コロナが発生してからは二年以上活動できていません。
土屋 いいですね。僕も一緒に行きたいです(笑)
繫昌 資料もあるので見せますよ。
土屋 (いただいた資料を見ながら)確かに、議論してるって感じじゃないですね。
繫昌 防衛議連のときに説明会でのビデオをみんなで見たのですが、数人の議員のが「きゃきゃ」っと笑っていて、私は腹がたって「皆さん、不謹慎じゃないですか。市民のみなさんは不安なんですよ。」って言ったんです。こんな優しい言い方じゃなかったですけどね。
市長選にも出馬した新人議員は、「佐賀のオスプレイを受け入れると交付金が100億円入るから、事業の中に入れて」なんて言うんですよ。それにもカッとなってね。「それを市民の前で言えますか?」「なんで住民説明会に議員が来ないんですか?」「我々は防衛省のための防衛議連じゃないですよ。市民のための議連ですよ」ってね。熱くなってしまいました。
土屋 おっしゃるとおりですね。
繫昌 「我々は市民から負託を受けて四月に議員になったばかりですよ。新人議員にそこまでの責任を負わせるんですか」と私は発言しました。会場がシーンとなりましたね。もちろん、議員の中には旧三町の議員もいますので、感覚がちがう議員もいると思います。そういう地域は恩恵も少ないのかもしれませんね。交付金も基本的には自衛隊周辺にしか使えないことになってますからね。
土屋 繁昌さんのお話を聞いていると、鹿屋市側が市民の理解を得る為にできることは、まだまだ十分にありますね。不安をゼロにはできないでしょうが、まだまだ説明や議論をする余地は十分にある感じですね。それができるのは鹿屋市の行政しかないように思いますね。
繫昌 市役所側ができることっていうのは、結構あると思います。
土屋 交付金のことについて、もうすこし聞かせてください。再編交付金も鹿屋市はもらっていますが。
繫昌 現在の中西市長は、あまりお金を使わない方針のようです。
土屋 なんで鹿屋市はそんなに使わないんですか?
繫昌 鹿児島県の伊藤元知事と同じ方針ではないでしょうか。
土屋 ちょっと本当によくわからないんですけど、なんでそんなに使わないんですかね?
繫昌 私は中西市長が初当選したときに議員になったので、ある意味同期なんです。その年の一般質問で「現時点ではリナシティ周辺の市街地活性化に市長の責任はないと思います。ただ、この先何もしないのであれば、今後は市長の責任になりますよ」と発言しました。昔と違って、リナシティ周辺は市役所もなくなり、桜デパートもなくなっています。そんなところに一〇〇億もかけてつくって、毎年二億から三億円かけて公共施設を運営していますが、ほとんどの市民が行かない施設の現状をどう考えているのか、と。
土屋 すごいですよね。ある議員はすごい得票数のようですが、MQ9やリナシティや民間と公務員との格差の問題を聞いても、返答もありませんでした。
彼を知っているある人が言っていましたが、その方はとにかく毎日のように辻立ちはするが「土屋さんと議論なんかはできないんじゃないですかね」と言われました。
繫昌 残念ながら、正論や改革案では票には結びつかないのが現実だと思います。リナシティやサルッガの市街地活性化や、おおすみ観光未来会議のことを指摘・糾弾しても、票が増えることはなくて、かえって票が減ることになっていますしね(苦笑)
土屋 分かります。
新しいリーダーを育成したい
繫昌 今回、市議選後に鹿屋市、錦江町、肝付町、東串良町、南大隅町、垂水市の二市四町の議員と共に勉強会を立ち上げました。鹿屋だけじゃなくて、大隅全体を考える新しいリーダーを育成したいと思っています。
土屋 最後に、繁昌さんのこれからの政治活動についてはどのようにお考えでしょうか?
繫昌 私は、十二年前市議選で落選し、三年間国会議員の秘書として政治を学ばせてもらいました。そして、三期目を迎えた今、これからは自分が引っ張っていかなければならないと、責任を痛感しています。
今後は後進を育てる必要性も感じつつ、ひとつひとつ課題解決を図り、市民感覚を忘れず、「こどもたちの未来のために」全力で議員活動をがんばっていきたいと思っています。
土屋 本日は長時間にわたりありがとうございました。
繫昌 こちらこそ、ありがとうございました。
取材日:2022年6月11日 繁昌議員の事務所にて
構成:土屋耕二
『やうやう』のnoteでインタビューの全文(有料)を読めます。
ぜひご覧ください。
コメントを残す