21号掲載

私は実家を離れたのが高校卒業と同時で、その後もアパート・マンション暮らしだったから、一度も家の庭の世話をしたことがなかった。でも、昨年、私が鹿屋に帰ってきてからは、高齢の両親が暮らす家の庭仕事は私の仕事になった。

正直、庭仕事は苦手だ。特に虫が苦手なのだ。だから、あの場所に雑草生えているな、落ち葉がたまっているな、そろそろ草むしりしないとな、でも虫とか出ちゃうんだよね、嫌だなと逡巡している間に、ぐんぐん雑草が伸びる。夏の雑草の成長スピードたるや壮絶だ。この夏、鹿屋で一番元気だったのは、雑草じゃないのか。

とはいえ、苦手なものは苦手だ。鹿児島市で暮らす姉が帰省するタイミングを見計らって草むしりを一緒にしていたが、姉だって忙しい。雑草が伸びているから帰ってきてほしいと頻繁には言えない。雑草は頻繁に生えてくるのに!!そういうときは、一人で庭に行かざるを得ない。
そういう訳だから、庭で何かの虫に遭遇するたびに、事件でも起こったのではないかという悲鳴を上げていた。我が家は住宅街にある。隣近所に「だいじょうぶです!事件ではありません!草むしりです!」と釈明したいぐらいの悲鳴だ。でも、そんなことをわざわざ言いに行く人はいるまい。私も行かない。ご近所さん、今さらですが、あれはただの草むしりです。お騒がせしました。

そして、元気な雑草の中でも特に元気だと思ったのはカズラだ。気が付けば、柿の木などをぎゅうぎゅうに締め上げている。柿の木の栄養を横取りして、カズラだけが日光をさんさんと浴びている。「許せない、カズラめ。他人のふんどしで相撲を取るとは!」そんなことを言いながら、柿の木のカズラは、姉が成敗してくれた。でも、あいつらはすぐに手を伸ばしてくる。しばらく見て見ぬふりをしていたのだが、いよいよ家に手を伸ばしているのを見て、あきらめて私もカズラを引っ張って抜くことにした。庭には棘のあるカズラと、ないカズラの二種類があったらしい。軍手越しに棘が刺さった。だから嫌なんだよ、、、草むしり、、、。

そんな草むしりを繰り返し、カズラだって、棘のあるものを葉の形で見分けるぐらいはできるようになったし、ダンゴムシをつんつんして楽しむぐらいの余裕が生まれた。自分でいうのもなんだけれど、なかなかの成長だ。カマキリだって、直接は触れないが、以前のように飛びのいて驚いたりしない。それにしても、カマキリってめちゃくちゃ威嚇してくるよね。鎌でパンってはたかれた勢いがすごくて怖かったから逃げたんだ。そして、逃げる途中で振り返ってみたらまだ睨んでいたんだよね。気が強すぎるよ。勘弁してください。

まだ夏は続くのだろうか。夏が終わらない限り、私の草むしりも終わらない。おかげで私の地方暮らしのポイントは一つずつアップしている気がするけれど、、、残念ながら、私の悲鳴もまだまだ続く。


文・谷村亜希子
鹿屋市出身。鹿屋市役所で16年間働いた後、都会と地方の架け橋になる!という思いを胸に、地方移住を支援している東京のNPO法人に転職。2024年5月にUターンし、思い変わらずフルリモート勤務中。

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