（16号掲載）

鹿屋で飲食店を開業したいと思っているのですが、踏み出すことができません。どうすればいいですか？また、具体的には開業準備としてどのようなことをすればいいか教えてください。

30代・男性

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回答

相談ありがとうございます。今回の人生相談の回答にぴったりの人物がやうやう編集部にいるので、彼に答えてもらうことにします。では、どうぞ。

　いつもやうやうをご覧いただきありがとうございます。編集長の土屋です。私は「生うどんつちや」といううどん屋を２００８年から経営しています。開業前から多くの経験をしてきました。私の経験や考えがすべてではないですが、もし参考になるようでしたら幸いです。

　まず、踏み出すことができないということですが、飲食店の開業には二つのことがあれば、誰にでもできます。それは「ちょっとの勇気」と「実印」です。
　これはリスクを取れるかどうかということですが、はっきり言ってそれは個人によってぜんぜん違います。例えば、イーロン・マスクは人生が数回にわたって破壊されてもおかしくないようなリスクを何度かとっていますが、（マスクの数万分の一の規模とはいえ）目立っている飲食店の経営者もリスクを果敢に取っていくようなタイプが多いように思います。そういう意味では大胆不敵な人が開業できるのかもしれません。
　多くの優秀な経営者はリスクを減らして、安定的な利益をうむ仕組みをつくることを考えますが、一代で商売を成功に導くような人はこちらの人間が多く、こういう人がうまくいくものです。これは商売はなにが成功するか誰にもわからないので、手当たり次第に手を付けるくらいがちょうどいいのです。想定してた通りになるなんてことはありません。頑固な職人タイプの経営者は頭が固くうまくいかないものです。（おそらく私はこっちのタイプの人間です。）

　飲食業は産業別の収入を見てもどこよりも低く、基本的に儲かる商売ではありません。韓国ドラマを見る人は、韓国で小さな屋台をしている年輩の人たちが多く登場することに気づくと思います。韓国は社会保障が日本のように整備されていないこともあり、定年後に小さな商売を始める人が多いからです。ここからわかるのは、「飲食店経営は社会保障」だということです。日本でも数年前から脱サラして蕎麦屋をはじめるという人たちが増えました。このような人たちの多くは死ぬまでこの商売を続けるつもりで始めています。まさに「飲食店経営は社会保障」なのです。
　この前提でいくと重要なのはその人の人間性です。急にあやしいアドバイスになってきましたが、考えてみてください。飲食店は同じ人に長期間にわたって応援してもらう必要があります。そうなると結局は人間性が最も重要になってくるのです。
　私の知り合いに将来ラーメン屋をやりたいと言っていた人がいるのですが、彼は役所の税務課につとめながら自分の家族の嘘の申告をしていました。こういうやつはまず無理です。ほかにも飲んでもいない生ビールをつける居酒屋とかもいます。（ここは潰れました。）さらには、「建築、不動産関係の仕事をしている人には飲食店は無理」と名言する著名な飲食業経営者もいるほどです。
　とにかく飲食店は人生をかけた長期戦なので、（誰しも人生は途中いろいろとあるものですが）結局は人間性が最後はものを言います。そして、それは商売を始める前に決まっているというのが「不都合な真実」です。

　大きなシステム（会社、行政、マスコミ、医療、公共事業、補助金など）に依存してもいい思いができない時代になりつつあります。安定していると言われる職場での離職やメンタル不調の多さ、補助金関係の炎上リスクなどがそれを示しています。そうなると必然的に個人事業を選ぶ人が増えるはずです。
　別に儲かりはしませんが、リスクをとり人生をかけて真面目にやればきっとやっていけます。今はネットがあるので、個人でも創意工夫すればクリエイティブなことはできるし、個人はコストもかからないので持続性はあるし、軌道修正も簡単です。そして、なんと言っても上司がいません。まじで最高です。

　次回はもう少し具体的にどんな準備をすれば良いのかを書きたいと思います。がんばってください。

回答者・やうやう編集長 土屋耕二