お掃除自慢

23号掲載

お掃除が好きか嫌いか。お掃除が得意か苦手か。これって卵が先かニワトリが先かの話になると思うのだが、私はお掃除が苦手なので、お掃除が嫌いだった。
昭和生まれの私の子どもの頃の学校の掃除時間は、教室の後ろに机を引いて、箒で掃いて、雑巾がけをして、それだけだった。トイレ掃除の担当は、サボって水遊びをするぐらいの感覚で、ホースで水をジャバジャバ撒いて、それでおしまいだった。子ども時代に学校のトイレをピカピカにしようと取り組んだ日本国民は何人ぐらいいるだろうか。
お父さんやお母さんがキレイ好きで、お家がピカピカだと、子どももお掃除が好きになるのだろうか。私の家族はみんな、お掃除が苦手だった。その家族の中では、父に「七穂はキレイ好きだから」とよく言われていた。どんな実家かお解りいただけるだろう。
私はお掃除の仕方を知らなかった。だから苦手だったので、お掃除が嫌いだった。それが今、お掃除はまだまだ得意とは言えないが、お掃除が嫌いではなくなった。この違い、変化、成長をお解りいただけるだろうか。
私はホテル太平温泉で、フロントにも入れば、客室清掃にも入る。厨房や団体様の夕食会場、宴会場にも入る。つまり何でも屋さんだ。お掃除が苦手で嫌いだった私が、客室担当していて、ホテル太平温泉大丈夫か⁈という声が鹿屋市全域から聞こえてきそうだが、大丈夫だ。人は成長するのだ。
ホテル太平温泉の客室は全部で48室。客室担当スタッフが10人ほどでお掃除をさせていただいている。洋室はベッドメイキングもするのだが、大きなベッドにパーンと白いシーツが張られるとそれはそれは清々しく気持ちがいい。トイレとお風呂のお掃除をして、消毒液で拭き上げ、乾拭きをする。お部屋に掃除機をかける。最後に拭き掃除。大方の流れはこんな感じで、なんだか簡単そうと思う方もいらっしゃるだろうか。ちなみに、トイレを消毒液で拭き上げるのは、トイレ周りの床と壁、便器の中以外、全部拭き上げる。お風呂も浴槽が面している壁全面と浴槽、手すりやシャワー、鏡、全部拭き上げる。決して簡単ではない。この手順だけでは伝わらない細かい部分まで徹底的にきれいにしていくお掃除のプロ集団なのだ!
ホテル太平温泉で働き始めた当初は、指導係の先輩に指導してもらう度に「へぇ~、そんなとこまで拭くんですか」と驚いてしまっていた。だって、本当にやったことなかったから。指導係の先輩は「コイツ大丈夫か⁈」と目で語っていた。だから私も「大丈夫じゃありません」と目で応えていた。
しかし、人は成長するのだ。お掃除のノウハウをゼロから教わった私は、きれいにすることの清々しさ、気持ちよさを知った。方法を知らなかったから、これまでできていなかったけど、知ったら楽しくなってきたのだ。お風呂の水垢だって、ステンレス部分の曇りだって、ピカピカになるのだ。心までピカピカになるようで、うれしい!
ホテル太平温泉は洗面所の排水口、浴室の換気扇、客室のエアコンも定期的にお掃除をしている。私の経験上、泊まったことのあるホテルで、こんなにお掃除が行き届いていたホテルがあっただろうか。たいがいクローゼットの奥やテレビ台の裏に埃がたまっていたり、汚れていたり、浴室の排水口が匂ったりするものだ。しかし、ホテル太平温泉は手前味噌になるが、本当にお掃除が行き届いている。クチコミで『建物は古いけど、お掃除が行き届いていて、気持ちよく過ごせました』などとコメントをいただくと本当にうれしい。客室担当冥利に尽きる。
窓枠の蜘蛛の巣を払い、内側からと外側からと濡れた雑巾で拭いたあと、乾いた雑巾で乾拭きした窓から見上げるこの時期の空は、本当に高く澄み渡り、美しく、思わず微笑んでしまう。灰や埃が取れてピカピカになった窓から見上げる秋の空が私は大好きだ。
人生の折り返しを過ぎて、このタイミングでお掃除が嫌いでなくなったことは、私の人生においてとても尊いこと。人生を締めくくる前に身の回りのことを小綺麗にして、人生を結べるなんて、感謝しかない。
昭和世代の皆さんはGメン75を覚えていらっしゃるだろうか。太平客室担当スタッフが各々の手に、お掃除道具を持ち、Gメン75ばりに横並びで歩いてくる、そんな絵を想像して私はひとりほくそ笑む。Gメン75を知らない方は、映画アルマゲドンのワンシーンや木村拓哉主演のドラマ・ヒーローのオープニングでもいい。お掃除プロ集団『太平』の面々が颯爽と歩いてくる! キャー、カッコいい! 私たちはホテル太平温泉客室担当に誇りを持っているのだ!


文・上井七穂
ホテル太平温泉で働きながら、ライフワークとして自己尊重感を高めるトレーニング『ほめ日記』のインストラクターとして活動しています。ホテルの日常や「ほめ日記」のことをお伝えしていきます。

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