(18号掲載)

――このマドリッドカフェを経営する前は何をされていたのですか?
店をやる前は東京で編集プロダクションを経営しながら、雑誌や書籍を作っていました。
――そこでの経験がコーヒーにつながっているのですか?
いや、取材で関わったりはしていましたが、自分で喫茶店をやろうという気持ちはなかったですね。ここはもともと両親が住んでいて歳もとっているし、近くにいながら働ける仕事を考えたときに自然とこの店をやろうとなりました。もう十二年になります。
――お店をされてこれまで、いろいろとあったと思いますが・・・。
お店がどうのというより、実は僕は浄土真宗の僧侶でもあります。
――え?カフェを経営しながらお坊さんとして門徒さんにいろんな話をしたりしているということですか?
そうです。ここでカフェをすることを決めたあとに、人生のさまざまな巡り合わせでそうなりました。お寺は住職である従兄弟が運営しているので、私は基本的に土曜日の朝の勤行に出向き、他の僧侶と週替わりで法話をしています。親しくしているお寺にも呼ばれたりしますが、この店が休みのときにやれる範囲での活動ですね。
――だから店内に仏教カフェの案内があるのですね。
毎月第四土曜日に開催していて、もうすぐ百回目をむかえます。別に仏教徒だけということではなくて、仏教の話をきいて心をおだやかに過ごしたいというような方たちが参加しています。
――今後もカフェと僧侶としての活動を体が動くかぎりしていきたいという感じでしょうか?
そうですね。浄土真宗の親鸞聖人は非僧非俗といって、人々の暮らしの場で語りかけることをされていたのですね。僕もそれをめざしてというわけじゃないですが、同じようなことをしていきたいですね。それに、面白いものでカフェでの仕事が僧侶としての学びにもなります。
――なるほど。
皆さんそれぞれ自分の生活を営みながら仏教の利他行、他を利する行いを自然にされているんですね。それはなかなか気づきにくいことですが、そのことに気づいていくと、お互いがぎくしゃくしないですし、自分と他人を区別したり比較したりしないですみます。そのことに僕自身もこのカフェでの仕事で気づかされて、僧侶としての肥やしになっています。そして、それをまた僧侶としてみなさんにお返しするということをこれからも続けていきたいと思っています。
文・やうやう編集部
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