南大隅町町長選挙

 4月13日に投開票された南大隅町町長選挙の見学に行ってきた。田中けい氏が立候補していたからだ。
 彼は南大隅町に核の最終処分場を誘致することで、地元は活性化し、原発政策の最大の懸念事項が解決されるので、日本をより発展できるという想いを持っている。そのこと自体に大きな反発もあるし、彼がいわゆる「ネトウヨ」界隈では有名な人だったので、彼のことを名前も見たくないと嫌う人も多かった。僕は田中氏と何度も対話をしてきた。僕としては最終処分場建設には反対ではあるし、基本的にリベラルな考えをもっているので、彼とはさまざまなことで意見が違っていた。とはいえ、主義主張が違う僕と何でも議論できる田中氏に、僕はいい印象をもっていた。
 彼は選挙戦の第一声を打詰という集落で行った。そこは鹿屋から車で1時間半はかかる山奥だった。途中の道は何箇所かがけ崩れの修復工事をしていて、聞くと集落の先の道路は崩れてそのまま通行止めのようだ。ここの住民が台風が来るたびに道が寸断される恐怖を感じることは容易に想像できた。
 実際、田中氏はこの地域(旧佐多町)でかなりの手ごたえを感じているようで、もしかしたら、かなり得票するのではないかと言われていた。しかし、蓋をあけると前回より少ない400票ほどの得票しかなく落選した。
 この結果については、いくつかの噂を聞いたし、個人的にも腑に落ちない点もあった。しかし、よその住民の僕が何を言っても仕方ない。田中氏は負けてこの町を去っていった。ここ鹿児島の多くの地域がそうであるように、今回も現職が当選したことで、「僕たちはこの街を変えることができない。」そう思った人もいただろう。
 県内で最高の高齢化率の南大隅町には多くの国有地が存在する。核の最終処分場は、今回の選挙の結果がどうなろうと20年後にはこの土地には誰もいないのだから、ここに決まっているよとの声も訊いた。見学に行った打詰という集落はきれいな山々に囲まれ、眺めると美しい海がひろがっていて、その先には種子島と自衛隊基地整備が進む馬毛島が見えていた。今回の選挙が僕たちの街の数十年後にどのような結果を生むことになるのか、考えさせられる選挙だった。

文・やうやう編集長 土屋耕二

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