22号掲載
私は、鹿屋市でフルリモートをしている東京の会社員である。だから、東京に行くことも多い。先日の出張は、日曜日の午後に出発する予定だった。
飛行機だけは、遅刻したらシャレにならないので、いつも早めに到着するようにしている。空港への直行バスの時間制約もあるので、この日は出発三時間前に到着した。バスの中で、スマホを操作し、オンラインでチェックインも完了。空港に着いたら直接保安検査場に向かうだけ。完璧だ。そう、完璧だったのだ。
出発まで時間もあることだし、そもそもお休みだし、のんびり昼飲みをすることにした。席に通されてメニューを眺めていたら、お水とおしぼりが二人分やってきた。連れが後から来ると思われているのかもしれないなと思ったが、一人分しか注文しないから問題はない。
すると、注文していない料理が運ばれてきたのだ。店員さんは、お連れ様の分と言う。連れがいないことを店員さんに伝えたが、店員さんは何度も伝票を見返し、何度も私に確認している。いや、いないものはいない、最初からいない。夏もようやく過ぎたのに怖い話か。店員さん、あなたには誰が見えたのですか。とりあえず頼んだ料理とお酒を飲んで、そそくさとお店を出て、保安検査場に向かった。
保安検査場で、飛行機チケットを空港の機械にかざし、さてゲートをくぐるかと思ったその時だ、エラー音が鳴り響いたのは。保安員から「鹿児島空港行きではないチケットをかざしてください。」と言われ、そうか、東京からの帰りのものをうっかり表示したのだなと思ってスマホを見た。そして、私はようやく事態を把握した。羽田空港行きと鹿児島空港行き、行きと帰りの飛行機を逆に購入してしまったらしい!
私は慌てて保安検査場を抜け出して、航空会社のカウンターに猛ダッシュした。購入済みのチケットをキャンセルし、行きと帰りの飛行機チケットを買いなおさなければ! 東京には絶対に行かないと、月曜日に東京で予定があるのだ!
飛行機を当日購入すると金額はいくらになるのだろう。予測はしていたが、最初に買った飛行機代金の二倍の金額を告げられた。冗談だろう、こんなものを会社に請求できない。さっきの水が二人分でてきたことよりも、よっぽど恐ろしいではないか! キャンセル手数料は私のミスなので払うとしても、仕事で行くのに自腹で飛行機代を絶対に払いたくない!
私は知恵を絞った。そして、ある可能性を思いついたのだ。まだ皆様にお伝えしていなかったのだが、私は今、会社員以外にも大学院生という身分を持っている。そう! 私には学生証がある! いい年なので、学割のことを聞くのはだいぶ恥ずかしかったが、思い切って聞いてみるしかない。すると私に幸運が舞い降りた。たまたまその飛行機会社は年齢制限を設けずに、学割を利用できる会社だったのだ! 神様!!!
飛行機代は最初に買っていたものよりもだいぶ安くなった。ありがたい。しかし、学割の使える便は限定的だったので、最終便での出発となった。というわけで、私は空港にさらに六時間滞在することになった。もう一杯飲むしかない。もはや、空港ではしご酒だ。楽しいじゃないか!
以上、一日のうちであった怖い話を二つ。でも、結果的には楽しかったから怖くもないか。あっ、次の店では一人分しかお水もおしぼりも出てこなかった。だから、最初のお店で一緒にいたのは神様で、うっかりものの私を見守ってくれていたと思うことにする。
それにしても、人生何が起こるかわからない。皆さんもお気をつけくださいませ!
文・谷村亜希子
鹿屋市出身。鹿屋市役所で16年間働いた後、都会と地方の架け橋になる!という思いを胸に、地方移住を支援している東京のNPO法人に転職。2024年5月にUターンし、思い変わらずフルリモート勤務中。

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