コワーキングスペースと高校生

 私は鹿屋市在住の東京の会社に勤めているフルリモートの会社員である。全国の自治体がお客様なので、誠に出張が多い。そして、仕事に追われがちなので、飛行機の中でも、空港の直行バスの中でも、会社のPCを開いて仕事をしていることが多い。乗り物の中でさえ仕事をしているのだから、乗り物以外の場所であれば、ますます仕事をするというものだ。だから出張先では、常にコワーキングスペースや電源のあるカフェなど、血眼で探しているのである。なんだか、悲しくなってきた・・・。そこまで仕事をしなくても・・・。
 という心の声や読者の皆様の感想はさておきまして、そんな私だから自然と全国のコワーキングスペースの特色など、見るともなしに見てきているのである。家具やデザインが素敵なところ、景色が抜群に良いところ、イベントが目白押しのところ、図書やカフェメニューが充実しているところ、情報交換が盛んなところ、本当に様々だ。でも、どこも利用者は似ていて、イケてるベンチャー企業に勤めているっぽい人や、私のようなサラリーマンばかり。そして、他人に干渉しない都会的スタイルだ。

 鹿屋のリナシティのコワーキングスペースはどうかというと、仕事をする上ではなんの支障もない。Wi-Fi環境と電源、そして、落ち着いた環境があれば十分だ。ここには、コミュニティマネージャーという、コワーキングスペースの活用や利用者の相談に乗ってくれる人が配置されているほか、起業相談や起業系のイベント、中高生を対象にしているまちづくり系のセミナーなどが積極的に実施されている。イベント多めのコワーキングスペースという印象だ。
 でも、鹿屋のコワーキングスペースの在り方で、私が最も驚いているのは、利用者に高校生が多いという点。高校生でいっぱいのコワーキングスペースなんて、全国のどこでも見たことがない。高校生たちは学校帰りにやってきて、友達同士で勉強を教え合ったり、受験の情報交換などをしたりしながら、夜遅くまで勉強している。ホワイトボードに数式や化学式など書き出し学びを深めている高校生は神々しくすらある。理系だな、かっこよ・・・。
 そんなわけで、毎日、夕方以降、私は高校生に囲まれて仕事をしている。学校の教室に間違って大人がいるみたいな、ある意味シュールな光景だ。でも、そんな私にも鹿屋の高校生はやさしい。入口を開けるとき、私の両手がふさがっていたりすると、内側からスッと開けてくれたりする。設置されているウォーターサーバーの使い方がわからなくて困っていたときも、高校生がやってきて教えてくれた。だから、私も入口で困っている高校生がいたら、そっと手助けしたりする。親切心にあふれた空間、その空間を支えているのが高校生であるという事実、こんな素敵なコワーキングスペースは全国どこにもない。
 目的があって同じ場所を共有している利用者同士なので、過度な干渉はお互いにしない関係性ではあるが、私の後輩にあたる高校の子たちが多いし、かつては私も受験生だったので、受験のストレスやプレッシャーはわかるつもりだ。そして、毎日通ってくる高校生は顔なじみでもある。積極的に話したりはしないけれども、彼ら彼女らの未来が幸せなものであるように、コワーキングスペースの片隅でこっそりと願う毎日である。春に笑顔でいてくれるといい。そして、私も高校生に負けないように、恥ずかしくないように、仕事をしようと思える、そんな空間が鹿屋のコワーキングスペースなのである。

文・谷村 亜希子 (たにむー)

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