映画・アニメ・ドラマレコメンド

編集部おすすめの作品をご紹介します


(21号掲載)

『KCIA 南山の部長たち』

韓国の建国は1948年で、その歴史は短い。第二次世界大戦後に国が成立すると、すぐに朝鮮戦争がはじまる。戦争で国は荒廃し、経済的にも疲弊し、政治は強権的な独裁体制だった。それを民衆の蜂起で政権を打倒したのが四月革命だ。革命は成功しても民衆は苦しいままで、政治家たちの汚職も続いていた。それを、当時少将だった朴正煕(パク・チョンヒ)が中心となりクーデターを起こし、政権を掌握する。
朴正煕政権は日本とアメリカから資金を得て、経済成長を成し遂げる。それと同時に政権を維持するために、KCIA(韓国中央情報部)を立ち上げ、クーデター仲間を幹部に据えた。

当初「対北朝鮮諜報」「海外情報活動」が目的だったKCIAは、朴正煕の下で権限を強化され、国内政治弾圧機関に変質していった。彼らは反体制を弾圧し、国際的な工作で軍事政権を正当化し、政敵排除のために暗殺、拉致、拷問まで行った。
そんなKCIAの部長が朴正煕を暗殺するところからこの映画は始まる。とても見応えのある映画です。

『ソウルの春』

1979年10月26日、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺という衝撃的な事件が韓国を揺るがす。(そう、「KCIA 南山の部長たち」の直後からこの映画は始まる。)
大統領暗殺という非常時に、保安司令官 チョン・ドゥグァン(史実では、全斗煥/チョン・ドゥファン) は暗殺事件の合同捜査本部長に任命され、その立場を利用して、事実を曲げ、仲間と作った秘密組織 「ハナ会」を利用して、軍の中枢の権力の座を奪うべく暗躍する。それを阻止しようと、孤軍奮闘するのは、首都警備司令官 イ・テシン(史実では、張泰玩/チャン・テワン)。彼は、危機的状況にあることを理解しない上層部に足を引っ張られながら、軍本来の任務および「正義」の信念を抱え立ち向かう。
こちらも史実をもとにした映画なので、全斗煥がその後どうなったかは知られている話ではあるが、映画としても最高に面白い。特に、全斗煥の「くそ野郎ぶり」が最高であり、名演である。

『二十五、二十一』

もう少し韓国の歴史をおさらいする。朴正煕と政権争いに破れ、暗殺未遂や投獄、さらに1973年には東京でKCIAに拉致され殺害されかけたのが、後の金大中(キム・デジュン)大統領だ。彼は1980年の光州事件では民主化運動を指導したとして死刑判決を受けるが、国際社会の圧力で減刑され、米国に亡命。(ちなみに全斗煥はこの光州事件で、民衆を武力で鎮圧し、多数の死傷者を出した。)
その後、金大中は直接選挙制が導入されると大統領選に挑み続け、1997年、IMF通貨危機のさなかに悲願の大統領に当選。

そんなIMF危機(1997年)という激動の時代を背景に、夢を追いかける若者たちの友情と恋、そして成長を描いた青春ドラマが「二十五、二十一」だ。
これまで書いたような韓国の現代史を意識しながら見ると、社会からの逆風に負けない強い心と、コミカルで甘酸っぱい青春ドラマに不思議とリアリティと重みを感じる。とはいえ、青春ドラマとして純粋におすすめなので、楽しく見てほしい。


(19号掲載)

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』

公開直後からネット上で賛否両論の熱い論争を巻き起こしている話題作。注目の背景には、原作『ガンダム』とは違い、ガンダムに乗り込んだのはアムロではなく・・・。という大胆なif展開。エヴァンゲリオンのスタジオカラーが作ってるので、そこまでやるのもわからなくもないが、とにかく賛否両論!!個人的には傑作だと思うし、続編にも期待。「これは新たな伝説か、それとも異端か?」――。ネット上の論争を飛び越え、自分の目で見て判断するしかない。エヴァ経験者やガンダム玄人、新規ファンの誰もが、それぞれに発見と驚きを得られる作品だろう。あなたは《ジークアクス》をどちら側で見る?

『LAZARUS ラザロ』

人類から苦痛を取り除いた「奇跡の薬」ハプナ。しかし、それは服用者を3年後に死に至らしめる薬だった・・・。開発者スキナーを追うために選ばれた5人のエージェントたちの命懸けの30日間を描くSFサスペンスアクション。アクション監修を『ジョン・ウィック』のチャド・スタエルスキが担当し、パルクール脱獄やビル間を飛び越える攻防戦など、映画級の動きをアニメで再現。音楽面では、現代ジャズ界の巨人カマシ・ワシントンやBonobo、Floating Pointsが参加し、『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』の渡辺信一郎が監督。『ラザロ』は、まさにアニメ×映画×音楽の三位一体を体現した傑作。見るしかない!!

『ブラック・ミラー』

テクノロジーは、私たちを幸せにするはずだった——。そんな素朴な思い込みを裏切る物語。スマホ、AI、SNS、そして私たち自身の欲望や孤独。そこで描かれているのは遠い未来ではなく、今日の隣人かもしれない。SNSに振り回される感情、AIに委ねる判断、監視される安心…。それらはどれも私たち自身が選んだはずのもの。それでも、いつしかそれに支配されていく。どれも現代社会にありふれた風景なのに、ほんの少しの歯車のズレで、世界がぐにゃりと歪んでいく。問題があるのはテクノロジーなのか、私たち人間なのかわからなくなる。現在、ネットフリックスでシーズン7まで配信中。こんな素晴らしい作品をいつでもスマホで見ることができるなんて、やっぱりテクノロジーは手放せない!!


(18号掲載)

『ザ・キラー』

Netflix『ザ・キラー』は、感情を排し、ルールに従って仕事をこなすプロの暗殺者をマイケル・ファスベンダーが演じる物語だ。普段では有り得ない偶発的な任務の失敗から始まり、パリ、ドミニカ、北米へと逃亡と復讐の道をたどる。モノローグと共に語られる暗殺者の哲学と、ディテールがリアルで、これは現代の殺し屋の教科書では?と見てるものに思わせる。映像は美しく、ザ・スミスの名曲が響く音楽は、いま映画音楽で最も注目されている二人、トレント・レズナー&アティカス・ロス。無機質な狂気を静かに描き出す、大人のための一本。監督は「セブン」「ファイトクラブ」のデヴィッド・フィンチャー。これは見るしかない!!

『グリーンブック』

『グリーンブック』は、1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ピアニストのドクター・シャーリーと、粗野なイタリア系運転手トニーが繰り広げる実話ベースの感動作。差別と偏見が色濃く残る時代に、レイシストであるトニーは「いけ好かない」黒人とバディを組むことになる。当初は反発ばかりしていた二人は、旅を通して少しずつ心を通わせていく。差別される黒人の方も考えを改めていくところが、この作品の素晴らしいところで、見る人の心に響く。アカデミー賞作品賞を受賞した文句なしの素晴らしい作品。

『セント・オブ・ウーマン』

内気な高校生チャーリーは盲目の退役軍人スレード中佐のニューヨークへの旅の世話をすることになる。出会ったばかりの二人の旅は、軽蔑と憐れみの感情ではじまるが、旅の途中で中佐の家族に会い、運転手や娼婦とのやり取りなどを通して心を通わせる。さらには旅を通して、それぞれの人生の痛みと苦しみに向き合うことになる。破天荒で下品な中佐をあのアル・パチーノが演じ、本作でアカデミー主演男優賞を受賞する。名セリフ「フーアッ!」も、金髪の美女と優雅にタンゴを踊るシーンも素晴らしい。人生で何度か見直したい名作。


『チェルノブイリ』

「ゲーム・オブ・スローンズ」や「THE LAST OF US」など数々の名作をつくっているアメリカ最大の有料テレビ局、HBOの作品。2019年の作品で、たった5話しかないが、当時、「ゲーム・オブ・スローンズ」を超える最高のドラマとの評価もあったほど。1986年、旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で大規模な爆発事故が発生。放射性物質はロシアだけではなく、遠く離れた西ヨーロッパまで飛散する。事故の処理にあたった人々は、炉心のかけらとは知らずに手で持ち上げたりする。(その消防隊員がその後どうなったかは想像の通り)あらゆる手を尽くすが、命を捨てて作業にあたってもらうしか事態を収束させることが不可能であることを突きつけられる。ドラマ全編を通じて、ソ連の全体主義と原発事故の組み合わせが最悪なのを見せつけられる。それに加えて、愛郷心のようなものがないと人間はなにかを守れないことに、僕たちは感動を覚える。見終わるとどんな反原発の運動よりも原発は人類に制御は不可能だと思わされる。U-NEXTで見ることができるが、絶対におすすめの作品。

『ホットスポット』

富士山を望むビジネスホテルで働く清美(市川実日子)は、フロント業務をしながら女手一つで娘を育てている。仕事はそれなりに楽しく、職場の人間関係も不満は特になく、自分の生活を守るために淡々と日々を過ごしている。そんなある日、清美は自転車でふらついて、トラックにひかれそうになる。清美の命を救ったのは、同僚の高橋(角田晃広)だった。一瞬で自転車ごと清美を担いで助けた高橋は、こんな人間離れしたことができたのは「自分が宇宙人だから」だと告白する。なんともくだらないお話だが、これがすこぶる面白い。主演の市川をふくめて俳優陣がそれぞれにいい空気感をつくっていて、妙な説得力がある。元気がないときに見ると元気になれるドラマです。

『トゥルー・ディテクティブ(シーズン1)』

チェルノブイリでU-NEXTを契約したなら、これもついでにオススメです。(なんかU-NEXTの回し者みたいになっているが。)テレビ界の最高峰の賞であるエミー賞を5部門受賞しているクライムサスペンス。2012年に殺人事件の参考人として二人の元刑事が別々に事情聴取される。そこでは、二人が担当した1995年の事件について何があったのかを聞かれる。ドラマでは2012年と1995年を行き来しながら物語は進む。二つの時系列で事件の真相が少しずつ明らかになっていく、そして、時間を超えて二つの事件と二人の人生が融合し、花火がぶつかるように光り輝く。そんな脚本は芸術的といっても過言ではない。初月無料ですので、いますぐU-NEXTを契約だ!!


『ラストマイル』

ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の監督と脚本家が描く両シリーズと同じ世界線で起きたサスペンス映画。Amazonを想起させるグローバル企業の配送センターのセンター長として赴任してきた満島ひかりは、宅配を利用した爆破テロに巻き込まれる。さらには前任者の謎に迫る・・・。私たちは、通販サービスに限らず、便利さや快適さから何も考えずにシステムを利用しているが、それらはいつの間にか、使っているつもりが使われていたりする。そして、気づいたらほかに選択肢がなくなっている。そんな現代社会への回答を提唱しているような良作。

『グレイマン』

「ブレードランナー 2049」「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリングと、「キャプテン・アメリカ」シリーズのクリス・エバンスが初共演のアクション映画。
服役中の主人公はCIAからリクルートされ、「グレイマン(見えない男)」と呼ばれる優秀な工作員として、世界秩序を裏側から支える。ある日、CIA組織の機密情報を知ってしまったことから、命を狙われるはめになる。脚本は、マーベル・シネマティック・ユニバース作品の脚本を数多く手がけてきたクリストファー・マルクスとスティーブン・マクフィーリーが担当。クリス・エバンスの筋肉とひげがバカっぽくて最高。映画は何も深いところはなく、アイデア満載のすごいアクションとスピード感で一気に見終わって、気持ちもすっきりする映画。アクション映画はこれでいいよね!

『レディ・ジョーカー』

高村薫の小説が原作のドラマ。映画にもなっているが、同じシリーズの『マークスの山』につづいて主人公の合田刑事役を上川隆也が演じたドラマ版が、話数も多いのでより忠実に原作を再現していておすすめ。「グリコ・森永事件」から着想を得て執筆されたという、本作は大手ビールメーカーを相手に、競馬場仲間の男たちが金をふんだくろうと犯罪を計画する。彼らは社会から取り残され、人生のババを引いてしまったと感じている。原作は約30年前に書かれたものなので、あの頃の社会にあった様々な問題が描かれている。いま見直すと、見方によってはこの社会は確実によくなったと感じる部分もあるかもしれないが、果たして本当にそうだろうか。ジョーカー(ババ)を引いていると感じている人間はいまも存在するはずだ。今見てもスリリングな作品です。


『地獄が呼んでいる』

『新感染』シリーズや『寄生獣 ーザ・グレイー』などのヨン・サンホ監督がおくるダークホラー。突如、無作為に誰かの前に「顔」があらわれ、「〇〇は何時に死亡する」と告げる。時間がきたら「天使」と呼ばれる怪物が三体現れ本人を残酷な方法で殺すという超常現象が世界中の人々を恐怖に陥れている。そんなマンガみたいな設定だが(実際に原作はウェブトゥーン)これがとても面白い。人々はなんかのトリックだろうと信じない人間が大半だが、これは神のお告げだと新興宗教が影響力を増していく。警察、新興宗教、教祖、SNS上の過激派、マスコミ、活動家などそれぞれの人間たちが複雑に絡み合い、この世界を生き抜いていく。ドラマでのCGがすごくよくできているので「天使」にもリアリティがあり、必見のドラマ。

『葬送のフリーレン』

原作は『少年サンデー』連載中のマンガ。かつて魔王を倒した勇者パーティの一人エルフのフリーレンは、エルフ特有の長寿のため、どんな出来事も何度も体験するので、何事も他人事である。時はたち、新しい仲間とまた旅をするフリーレンは、かつての仲間のことを思い出しながら旅をすることで、昔の旅はかけがえのないものだったと気づく。それはまるで、親が子供に「このあと先に死ぬので、このことを覚えておいてほしいなぁ。」と願うようなものだ。だが、そんなことは生きてる時間が違うので、うまく伝わらない。そんな切ない気持ちにさせてくれるとてもよくできたアニメだ。

『サンクチュアリ』

かつて、こんな面白い日本ドラマがあっただろうか。大相撲を舞台にしたネットフリックスで23年に一番話題になったドラマと言ってもいいだろう。相撲に一切興味がないヤンキーの小瀬は、今はめちゃくちゃな状況にある家族の古き良き思い出を相撲に重ねていた。相撲界の陰湿ないじめ、八百長、タニマチなど、これまでドラマでは描いていなかった相撲界のタブーまで踏み込んだ内容は驚きだし、強力なライバルとの対決から復活までの軌跡は格闘技ドラマの王道といってもいい。なんといっても主人公の猿桜(小瀬)がすばらしい。


『忍びの家』

この日本社会には忍びが存在する。服部半蔵の末裔である一家は大きな任務で家族を失い、現在は酒の蔵元として生きている。父は忍びの活動はもうしないと決意する。しかし、生活が困窮している母は政府からの任務をうけるし、子供たちは自分の忍術をつかってしまう。親から見たら(特に父親)古き良き時代や「あるべき姿」を守ろうと頑なになるが、子供たちはそんなことはどこ吹く風で自分のトラウマや可能性に真剣に向き合っている。「現代社会において家庭は崩壊しきっていて、新しい形をみんな模索している。」と言われているが、これも父親からの一方的な見方に過ぎないのかもしれない。シリーズ化に期待の良作。

『エルピス-希望、あるいは災い-』

女子アナの浅川は、スキャンダルで失墜してからは何をいわれても何があっても心を動かすことがなくなっていた。そんな浅川に新米ディレクター岸本が冤罪事件の真相究明を手伝ってくれないかと声をかける。それをきっかけに、司法のあり方、さらには自分たちTV局の報道のあり方、忖度、圧力の構図に気づいていく浅川と岸本。地上波放送のドラマとしてこれらマスコミの問題点を正面から描いている力作。さらには語り部が浅川と岸本が別な視点で存在しているのも、報道においてのあるべき公平性を表していて良い。面白いし賞賛すべき作品。

『孤狼の血』

昭和63年。マル暴の大上は、脅しやゆすりはもちろん、ヤクザともつながって賄賂ももらうし、取り調べ室でちょめちょめ(by山城新伍。昭和!)までしちゃう、ヤクザ顔負けのめちゃくちゃな刑事。そこに、若手の日岡が部下として配属される。大上はヤクザと庶民の間にたってなんとかバランスを取ろうとするが、実は広島県警全体が・・・。あとはご覧になってのお楽しみ。脚本もキャスティングも素晴らしいが、なんといっても役所広司の演技がずば抜けている。鹿児島県警の問題が注目されている今見ると、ムネアツである。


『首』

オフィス北野の会社のごたごたや制作会社が離れたりと、作品の外でいろいろと大変な状況にあったこの作品。まぁ北野武らしい、本気なのかネタなのかわからない内容になっている。ジェンダーの問題を扱うのに慎重にならざるを得ない現代だが、どこかネタにしているような、バカにしているような不謹慎さが、この映画にはあるように思う。性の問題っていい歳になって振り返ってみると、そんなもんだよね。というメッセージなのかもしれない。(いや、北野映画では昔からそういうのバカにしてたかも!!)

『THE FIRST SLAM DUNK』

スラムダンクが映画化された。連載中にがっつり読んでいたおっさんとしては、「まじかよぉ~。映画化なんかより、バガボンド終わらせてくれよぉ。もっというと、映画化なんかより、マンガのスラムダンクの続きを描いてくれよぉ~~!」って思っていた。とはいえ、もちろん映画は見ますよ。えぇ、骨は拾いますよということで映画館に行ってきた。結果は号泣。いろいろと引っかかるところはあるが(映画としての主役と原作の主役違う問題)そんなことより、冒頭の登場シーンでもうやられる。とにかく(原作読んでから!!)みてください!!!

『新宿野戦病院』

クドカンの脚本でフジテレビ。個人的には最近の日本で作られるネットフリックスオリジナル作品のドラマの出来が良すぎるのでまったく期待していなかったが、これが、でれぇ~おもしれぇ。新宿・歌舞伎町にあるつぶれかけの病院が舞台で外国人労働者、薬物、ホスト、風俗にコロナ。これだけの社会問題をコメディとはいえ正面から描いている。特にコロナについては、地上波でここまで突っ込んで描いたのは、この国では賞賛に値すると思う。少し遅れてネットフリックスでも配信中。


『T・Pボン』

ひょんなことから新隊員としてタイムパトロールに加わることになった凡。先輩隊員のリームとともに歴史をさかのぼりながら、不幸な死に方をした人を救うという任務を遂行していく。『ドラえもん』『パーマン』『キテレツ大百科』などの藤子・F・不二雄の生誕90年を記念したアニメ作品がNetflixで誕生。ドラえもんのイメージとは違い、血は出るし人は殺されるしで、『 SF・異色短編』を思い出すような「すこし不思議な」物語。タイムパラドックスなど完全に無視した、なんでもありのSFだが、現代の伏線回収や緻密な設定なんか二の次の楽しいお話に心温まる。

『ミッション:インポッシブル デッドレコニング』

トムクルーズは元気だ。ミッションインポッシブルのシリーズ最初の作品ができたのは約30年前だ。昨年発表された最新作の「MI:デッドレコニング」の続編も撮影中との報道もある。シリーズを通してみると、ただのハラハラドキドキのアクション映画というだけではなくパンデミックやAIなど時流を予測していたかのような緻密な設定と脚本でこれだけ続く人気作品なのも納得である。

『BLUE GIANT』

宮城県仙台市に住む高校生・宮本大は中高生時代はバスケ部だったが、ある日聴いたジャズに心を打たれて、「世界一のジャズプレイヤーになる」とテナーサックスを毎日吹き続ける。楽譜は読めない、誰かに正式に習ったこともないそんな青年が世界一のジャズプレイヤーになれるのか?なれるわけない。これを読んだ人はそう思うだろう。所詮はマンガだと。そう、これは「キャプテン」や「スラムダンク」のように熱血青年マンガなのだ。マンガでの説得力があればそれでいい。そして、その説得力がこの作品にはある。それに加えてアニメ映画の今作はプロのジャズミュージシャンが演奏を担当していて、音楽マンガの映像表現の新しい可能性も示しているように思う。できるなら音響がいい環境で見ていただきたい作品。


『デューン 砂の惑星』

フランク・ハーバートが描くSF小説の金字塔「デューン 砂の惑星」。映像化は不可能と言われていたこの作品を『プリズナーズ』『メッセージ』『ブレードランナー 2049』(どれも超オススメ)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がメガホンを取った。歴史、宗教、政治が絡み合った壮大な原作を見事に映像におさめ、第94回アカデミー賞では最多6部門を受賞。同時代にこの作品をスクリーンで見ることができることに喜びを感じるほどの傑作。24年4月現在は続編も上映中。

『BLUE EYE SAMURAI/ブルーアイ・サムライ』

あまり知られていないが、Netflixの時代劇アニメ『ブルーアイ・サムライ』がすこぶる面白い。白人との間に生まれた女剣士が主人公で、父親であろう白人への仇討の物語だ。一番の見どころであるアクションシーンは大量の血がながれ、悲惨なまで追いつめられる主人公の戦いは、動き、演出、音楽が素晴らしく見ている者を飽きさせない。作中の演出もえぐいし、ちょっとエロい。(大人向けのアニメです)
海外制作の時代劇はアニメに限らず、判断に苦しむというか、微妙なものが多い。『ブルーアイ』はいわゆる時代考証がしっかりしているというようなものではないが(エンタメだしそれでいいと思う)日本の美しい自然や街並み、そこに住む人々の文化を丁寧に描いている。新シリーズの制作も発表され、かなりオススメの作品です。

『耳をすませば』

進路について悩む読書好きの少女と自分の夢にまっすぐな少年の物語。最近は実写化(やめてくれぇ!!!)もされて再注目のジブリ作品。中学生の微笑ましい恋愛物語でもあるが(「まあ、ロマンチックですこと」)本誌の特集である創作活動に関する映画でもある。(「俺、そういうの好きじゃないよ。逃げ道作っとくみたいで」)1995年につくられ個人的には何度見たかわからないくらい大好きな作品。雫や聖司が語る言葉は、現実をなにもわかっていない子供たちの勘違いなのかもしれない。けれどそのかけがえのない奇跡のような瞬間こそが、この作品をみた多くの人に「大人になっても」感動と創作活動への意欲を与えてくれる。(だから実写化なんかしないでくれよぉ~。)


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